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いずれにしても重要なことはどの事業にも一律に資金を投下するのではなく、様々な基準にもとづいて企業が強みを発揮できる事業に重点的に投資し、そうでない事業は撤退、縮小するという戦略的な投資決定をおこなうことである。
このように、事業ポートフォリオのエッセンスは、成長企業や高収益企業に経営資源を配分するだけでなく、成長a性がなかったり、業績が不振である事業からは撤退するという戦略をともなっていることである。
アメリカ企業の中で撤退戦略という点で最も徹底しているのがゼネラル・エレクトリック(GE)である。
詳しくは第23章で説明するように、1981年にGE会長に就任したジャック・Wは、経営目標として「0E20%維持を掲げ、「世界市場において第位か第2位の事業のみを手がける」という方針のもと、大胆なリストラクチャリングを実施してきた。
Wが、このような大胆なリストラクチャリングを進めていく上で出したコンセプトの1つに「ビジネス・エンジン」がある。
Wは、利益をエンジンの「推力」にたとえている。
この推力は、GEでは全社員の10%以下で全社利益の30%をあげている金融サーピスなどの花形部門からもたらされる。
しかし、高水準の推力を持つ事業は非常に成長が速いため、それ自体が生み出すより多額の資金を投資に振り向けねばならない。
したがって、低成長分野の事業が燃料としての資金を提供する一方、高成長分野の事業は推力である利益を稼ぎ出し、その結果としてGEは全体としてロケットのように急上昇するという。
また、ピジネス・エンジンは、余剰資金を株主配当の源泉とする一方、エンジン自体を強化するための新事業買収をもおこなう。
このようにみると、GEのビジネス・エンジンはGE版の事業ポートフォリオの考え方といえる。
GEに限らず、株主価値創造を目標とするアメリカ企業は、株主の利益を生み出すために、有望な事業を買収し、経営目的に適合しなくなった事業を売却することによって、バランスシートの資産内容(事業内容)をどんどん変化させていく。
場合によっては、創業以来の事業や長年取り組んできた事業を売却することもありうる。
利益創出のために、事業目的にあわなくなった資産(事業)は売却し、新たに必要とされる事業は買収するのである。
これによって、同じ社名の会社であっても、10年間たてば、バランスシートが大きく変化していることになる。
これに対し、これまでの日本企業は、新事業は内部の経営資源を用いておこない、古くから取り組んできた事業の場合、業績不振が長年にわたって続かない限り、撤退しない傾向があった。
GEの場合、売却された企業のすべてが、必ずしも業績が悪かったわけではない。
世界市場で1位か2位、あるいは「0E20%という基準を満たせなかっただけである。
このように、アメリカ企業は企業全体の高業績維持のために、事業戦略に適合しなかったり、資本コストやJOEなどの業績評価基準を満たせない事業は売却して撤退しようとするが、日本企業の場合、撤退基準があいまいであり、よほど業績が悪化しない限り、撤退という判断はおこなわれなかった。
以上述べたように、これまで日本企業の経営戦略には撤退戦略が欠けていたといえる。
新規事業進出とともに事業撤退の基準を定めておかないと、価値創造のための事業ポートフォリオ管理にはならないのである。
3、4事業再構築のあり方。
ここにきて、多くの日本企業が人員削減を含むリストラクチャリングを打ち出している。
撤退戦略を重視するというと、常にリストラをやると受け取られるかもしれないが、そうではない。
撤退戦略とは、必ずしも事業の閉鎖ではなく、事業の売却・譲渡も含むものである。
その事業を手に入れる企業のほうは、自社の経営戦略に適合したので、その事業を買ったのであり、当然、必要なてこ入れをしつつ、その事業を発展させようとするであろう。
したがって、事業の売買は効果的におこなわれれば、その事業が再生するチャンスになる。
逆説的にいえば、これまで日本企業が撤退戦略を持たなかったがゆえに、非効率な事業が温存され、その結果、ここにきて大胆なリストラが必要とされるようになったのである。
しかし、現在、発表されているリストラ策の中には株主価値創造の観点からみて、不十分なものも多い。
単なる消極的な人員削減や事業の閉鎖のみを打ち出し、さらなる企業価値の増大につながるような積極策を打ち出していない企業も多いのである。
そもそも、リストラクチャリングとは、本来、事業の再構築という意味であり、1980年代に日本ではじめてこの言葉が使われた頃は、低成長経済への移行と多くの産業の成熟化という環境変化に対応して、不振事業からの撤退、新規事業の開発によって、事業構造を大きく変えるという積極的な意味を持っていた。
それが、ここにきて「リストラ」と短縮化されるに際して、もっぱら人員削減の意味で使われるようになっている。
しかし、単なる人員削減ならば、今後のコスト削減額の現在価値分だけ企業価値が高まるにすぎない。
これに対し、本当に企業価値を高めようと思うならば、人員削減と不振事業の縮小・撤退だけでなく、その次の段階として、重点事業や新規事業の拡大といった本格的な事業構造の再編成をおこなうことが必要であろう。
つまり、コスト削減額の現在価値だけではなく、重点事業分野でプラスの正味現在価値が生まれることが期待されるような事業再構築が必要とされているのである。
41持株会社とグループ経営4、1グループ経営をめぐる環境変化。
本章では、企業の新規事業創出と資源配分戦略について説明をしてきたが、これらの問題は、親会社単体のレベルではなく、子会社も含めた企業グループで考える必要がある。
グループ経営の重要性が高まってきた理由として、企業の多角化が進んだことがあげられる。
多くの企業は、多角化事業の多くを子会社形態でおこなっている。
今後も、特に本業とは異質の事業に進出する場合、独自の事業スタイルや給与体系をとるために子会社形態での新事業進出という形が増えるだろうoまた、日本企業のグローパル化の結果、日本企業の経営は必然的に海外子会社も含めてのグループ経営になっている。
日本にある親会社のみではなく、海外子会社を含むグローパルな企業グループ・レベルで、経営を考えなければならないのである。
さらに、最近、連結決算制度の強化と持株会社の解禁という制度面の変化がグループ経営の重要性を高めている。
これまで、わが国では、公開会社は証券取引法によって親会社の個別財務諸表と連結財務諸表を開示することが義務づけられてきたが、個別財務諸表が主で連結財務諸表が従という位置づけであった。
しかし1999年4月以降に始まる事業年度(2000年3月期決算以降)から、これまでと反対に企業の業績開示制度は連結決算が主、親会社単体決算が従となった。
さらに連結決算のルールも変更され、従来は持株比率を基準に連結子会社の範囲が決められていたが、実質的にその会社を支配しているかどうかで連結範囲を決める支配力基準に変更された。
その結果、持株比率の変更によって連結の対象からはずすことができなくなったのである。
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